研究内容

野中研究室は2019年4月にスタートしました。当研究室では、2018年のノーベル化学賞で脚光を浴びたファージディスプレイ法を起点とした研究を展開しています。ファージディスプレイ法とは、バクテリオファージの表面にランダム配列ペプチドやタンパク質を提示させ、標的分子との結合を解析する手法です。この手法自体は30年以上の長い歴史がありますが、近年の次世代DNAシーケンスの発展に伴い、有用性が再び注目されつつあります。当研究室では、次世代DNAシーケンサーを用いることで、一度に膨大な数の配列を網羅的に解析するシステムを構築しています。現在、主に次に上げる2つの研究を展開しています。

① 難治性疾患の新規診断、治療法の開発
ファージディスプレイ法は従来の生化学的手法では困難とされてきた、生体試料中に微量しか存在しないマーカー分子を同定できる可能性があります。癌、アレルギー、自己免疫疾患といった難治性疾患に対する新規診断、治療法の開発を行っています。現在までに複数の共同研究を国内外で展開しています。

② 糖鎖機能の制御法の開発
生体構成因子の一種である糖鎖は、ほぼ全ての病気の発症と進展に関与していますが、構造解析や標識体合成が難しいため、生理機能が不明なものが多く残されています。当研究室では糖鎖研究にケミカルバイオロジーの視点から取り組むことで、問題解決を図ります。糖鎖結合ペプチドや糖鎖模倣ペプチドをスクリーニング、化学合成し、細胞および個体の外から加えることで、病気に関わる糖鎖の機能を制御する研究を行っています。